倍力のしくみを使わず荷を牽引すると、搬器がウインチ側に引き寄せられます。つまり山側に動きます。搬器には、動索の張力Tが2方向、搬器じたいの重力、固定索（主索）の支持力（固定索に直角に上側方向）の４つの力がかかっており、これら４つの力が釣り合うところまで動くためです。

すると、搬器から荷に伸びる動索が地山に平行に近づいてしまい、荷を上げる力が弱くなってしまいます。そのため、荷の端（はな）を上げることができず、張力Tを増しても荷を引きずるだけになってしまいます。

このような牽引を強引に行うと、切り株にぶつかって引けなくなったり、最悪ワイヤーロープが破断して事故につながることがありますのでお勧めできません。
ちなみにこのように搬器が荷の上から居なくなってしまう現象を「搬器が逃げる」といいます。

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